「壁だけの美術館」の異名を持つトリックアートの美術館
車で行ける範囲内で近くにゴルフ場や自然公園はあるものの、一帯は山手にある閑静な住宅街であるため、そんな町中の美術館というのは少々驚きである。
フランスのオルセー美術館にある作品のトリックアートが展示されていたそうで、外観もそのアート作品になっていてチープ臭さは否めないものの、箱物としては一定のコンセプトのもとに運営されていたらしい。
美術館が運営されていた頃は入館料1,100円と規模から考えれば微妙な価格帯が設定されていたが、あまりにも集客ができなかったのか、閉館する少し前からは500円程度の入館料にディスカウントし、街宣車で徹底した宣伝を行うなどしていたそうだ。しかしその努力も虚しく2000年頃に閉館となった。
その後、施設は放置されたままになっているが、他の廃虚と似たような感じで地元の族が集まるようになった。
それだけならまだしも銀行強盗の犯人が潜伏していたこともあったらしい。
訪問者たちのブログなどを拝見していると、2012年頃は地元の族が荒らしている程度だったが、訪問した2017年時点ではボヤがあったのか、1階、2階部分が燃えてしまって焼失している箇所が見受けられた。おそらくこの時までに残っていた壁画も焼けてしまったのだろう。
もはや「壁だけの美術館」の名を感じることはできない状態となっていた。
三階構造、1階から見える吹き抜けに魅力
さて、廃虚としての美しさについて触れてみよう。
先述の通り、ボヤ騒ぎがあったため壁に描かれていたトリックアートの類は焼失してしまったが、廃虚としては迫力のある部分や、廃虚独特の退廃的な美しさは感じることができる。
特に1階から2階にかけて吹き抜けとなっている空間は、大きなスタジオのようにも思え迫力を感じることができる。
2階に上がると吹き抜け部分から1階を見下ろすことができるが、外周通路を歩きながら見下ろすとさらに廃虚としての趣きを感じることができるのではないだろうか。
この吹き抜けは本来、天井に描いてあるアート作品を見るためのものとなっていたようだ。
また3階に上がるには2階吹き抜けの外周通路にある螺旋階段を使う。
この螺旋階段も老朽化が始まっているものの、非常に特徴的なシルエットをしている。
3階に上がれば、オープン時にはお土産屋とカフェスペースが一体となったようなフロアになっている。天井から空調のダクトが引き釣り降ろされ、族に荒らされた無残な姿になっているが、これもまた運命に終止符を打った施設の宿命なのだろう。
所在地
新東名高速道路の新富士インターチェンジから国道139号線を北に車を走らせ、富士宮市佐折地区に入るとこの廃虚がある。
先の説明の通り閑静な住宅地の近くにあり、廃虚自体は町民が使うメインの道路沿いにあるため、道端から外観を確認することができる。