通称:詐欺寺と呼ばれる国内最大クラスの宗教事件があった因縁の地
「ヤバい廃墟」というのは国内にいくつか存在する。例えば足場が崩れそうで歩くのに大きな危険を伴う廃墟。見た目が荘厳で美しく心を奪われる廃墟。アクセスが非常に難しく、一生に一回行けるかどうかわからないような廃墟。一口にヤバいと言っても、現代風の解釈も含めればたくさんあるが、この本覚寺は「ヤバい廃墟」の中で間違いなくトップランカーに入ってくるであろう廃墟だ。
茨城県太子町の山間部にあり、アクセス自体は車さえあれば難しくない場所だが、この廃墟のヤバさというものはその背景にある。
詳細は下記記事を参照されたい。
1984年、後に明覚寺の管長となる男性が千葉県野田市に水子菩薩を扱う訪問販売会社を設立。地元の曹洞宗の寺と協力して販売していた男性が、1987年に醍醐寺の末寺として茨城県大子町に1987年に宗教法人「本覚寺」を設立し、関東一帯にそのグループを展開した。1988年、真言宗醍醐派を離脱し、独立の寺として霊視鑑定を行っていた。しかし、消費者センターに苦情が寄せられ、詐欺商法だとして損害賠償請求が次々と起こったため、一時的に活動を中止した。その後、休眠状態にあった和歌山県の高野山にある「明覚寺」を買収し、関西地区で同様の活動を再開したが、こちらでも損害賠償請求が多数起こった。愛知県警は明覚寺系列の満願寺(名古屋市)の僧侶らを摘発した。1999年12月16日に、文化庁は「組織ぐるみの違法性が認められる」として和歌山地方裁判所に宗教法人明覚寺に対する解散命令を請求した。和歌山地裁は2002年1月24日に解散命令を出した。明覚寺は最高裁まで争ったが棄却されて解散になった。犯罪を理由にした宗教法人の解散命令としては、オウム真理教に次ぐ2番目の出来事であった。
引用:廃墟地図
こちらにも詳細に関わる情報が掲載されている。
つまるところ、水子供養を語った詐欺事件が関東、関西で発覚し、その違法性が認められたため解散命令が国から出され、その抜け殻がこの本覚寺ということである。
他の廃墟と違うところは、人の悲しみや怨念めいたものが渦巻く特殊な場所であり、おいそれと簡単に触れてはいけない事情もきっとあったに違いない。
入り口に立つと、まず急勾配な階段がいきなり現れる。これを登ると左手に見えるのが、おそらく宿泊施設とセミナールームに使っていたであろう建物。真正面には本堂があり、右手の少し離れたところには管理者か寺のものが住まう住居跡があった。
まずは宿泊施設に入るが、何故かそこらじゅうにムカデよけの袋が散乱している(しかもここ最近で仕入れたものを思われる)。事前に仕入れていた情報で「精神的に怪しい人が住んでいるかもしれない」と聞いていたので、もしかしたらそのとおりなのかもしれない、と感じた。幸い、その後、誰かと鉢合わせになることはなかったが・・・。
1階部分はすっかり荒らされていた。が、そんなものはどうってことなかった。見た目、ごく普通の廃墟で、特に気になるものはない。一旦、外を出て本堂を軽く覗いた後、宿泊施設に3階から入ることができる入り口に向かい、中に入る。
すると、そこにあったのはなんということか天井のいたるところからガーターベルトなどの下着類が吊るされているではないか。これはもう正気の人間が行ったものではない。壁にもパソコンで印刷したもので誰か(おそらく恨まれている人なのか)の名前に卑猥な一文が添えられている。
住んでいると言われる人がそうしたのかはわからないが、宿泊施設部分のだいたいがそのような装飾がなされており、言うならばサイコな空間がそこにはあったという感じだ。
3階部分から2階に降りると、大きめの部屋があった。おそらくセミナーに使われていたのであろう。資料が乱雑に入ったダンボールが散乱しており、ビデオテープや写真などもその辺に散らばっていた。いくつか写真を見てみたが、滝に打たれる修行僧のものとか、宗教的なものがほとんどだ。資料については目を通していないが、入り込んできたもので言えば、お金に関するものがほとんどだったように思う。
過去の詐欺事件の中心部と、サイケデリックな下着空間をいったん出て、そのまま奥に進むと位牌が保管されている堂を見つけた。足場が悪そうだったので、外から覗くだけにしたが、地震や劣化で倒壊しかかっている棚から位牌がバラバラと落ちている。信心深い人なら目を覆いたくなるような場面かもしれないが、人の心の隙間に入り込んだ結果によって、こうしたことになっていると思うとさすがに悲しい気持ちになる。
冒頭で言った「ヤバい廃墟」の中でも、本覚寺は人の欲や悲しみ、その怨念を感じるという意味のものである。できることなら、こうした事件によってこのような場所ができることは、二度とあってはならないであろう。珍しくそう思う場所であった。
所在地
JR水郡線西金駅から車で20分ほど。最寄りの高速道路インターチェンジだと常磐自動車道の那珂インターチェンジから国道118号線を1時間程度、北上したところにある。
人の住居がまばらな集落となっており、谷あいの場所とあってか晴れていても、どことなく冷たい感じのする場所がこの廃墟の雰囲気をさらに暗いものにしている。
道は細いが近隣の人が利用する道路でもあるので、整備の悪い山道というわけではなさそうだ。