ホラーゲーム「SIREN」のモデルになった廃村:岳集落(埼玉県秩父市)

ゲーム「SIREN」に出てくる羽生蛇村のモデルになった集落
埼玉県秩父市の山中にある「岳(たけ)集落」は、現在では廃村となり、人の営みが消え去った静寂の地である。しかしこの場所は、単なる過疎集落の跡地にとどまらない。
ホラーゲーム『SIREN』の舞台「羽生蛇村」のモデルとされ、ゲームファンや廃墟マニアの間で密かに注目を集めている場所である。
本記事では、岳集落の歴史的背景、現地の様子、『SIREN』との関連性、そして訪問にあたっての注意点などを紹介していく。
岳集落とは何か──消えた山村の記録
岳集落は、埼玉県秩父市浦山地区の山あいに位置する廃村である。昭和30年(1955年)の国勢調査によれば、当時この地には10戸・44人の住民が暮らしていたとされる。集落は急傾斜の山腹に築かれ、林業や農業によって生活が営まれていた。
しかし、交通の便の悪さや過疎化の進行により、若者は都市部へと流出し、高齢者のみによる生活も困難となった。こうして住民は次第に集落を離れ、やがて完全な無人地帯となった。
ゲーム『SIREN』との関連──羽生蛇村の原風景
ソニー・コンピュータエンタテインメントより発売されたホラーゲーム『SIREN』には、「羽生蛇村」という架空の村が登場する。深い霧に包まれ、斜面に古びた日本家屋が密集しているその集落の姿は、まさに岳集落の風景を彷彿とさせる。
岳集落は、現実の地形や建築様式、そして周囲の森の鬱蒼とした雰囲気まで、羽生蛇村のビジュアルイメージと酷似している。そのため、開発陣がこの地をモチーフにしたのではないかとファンの間で語られるようになった。
実際に現地を訪れると、薄暗い山中に朽ちかけた木造家屋が点在し、ゲームの中に迷い込んだかのような錯覚を覚える。
廃墟の現状──崩れゆく家屋と静寂の風景
現在の岳集落は、ほとんどの建物が半壊もしくは全壊しており、かつての生活の痕跡を辛うじてとどめているのみである。屋根の崩れた日本家屋、朽ちた梁、苔むした壁などが散在し、内部には農機具や家具、炊飯器などがそのまま残されている建物もある。
また、集落周辺は東側を高い山に囲まれており、日差しが差し込みにくく、一日を通して薄暗い。森の湿度と風通しの悪さにより、木造建築は著しく劣化しており、今後数十年以内には完全に自然へと還るだろうと推測されている。
なお、2013年には空き家への放火事件が発生し、複数棟が焼失するという痛ましい出来事もあった。このことも、集落崩壊の一因となっている。
六地蔵と神社──信仰の名残
岳集落の入り口付近には、風化した六地蔵が今も静かに立ち並んでいる。地元の言い伝えによれば、この六地蔵を動かした頃から不運が相次いだとされ、現在でも“祟り”や“怨念”といった都市伝説が語られている。
また、集落からさらに山道を登った先には「十二社神社」という神社も存在しており、かつてこの地で生活していた人々の信仰の中心であったことがうかがえる。
集落自体は写真の通り、ほとんど崩壊しかかっている。一部の建物はかろうじて立っているものの、ほとんどは雨風によるものと、一部では放火によって失われた建物もある。
2023年時点においても、薄暗いジメジメとした場所であることからカビなどの菌類が繁殖し、木造の家屋を確実に崩壊へと導いていることがわかった。
いずれはこの集落にある建物はすべて倒壊し、自然へと還るのだろう。それもそう遠くない未来のことになりそうだ。
所在地
浦山ダムより県道73号線を南に下ると、近くの場所まで来ることができる。
地図上では浦山ダム湖の東側、浦山公民館近くを探すと岳集落が見えるのがわかる。
日向公会堂を目印にして徒歩で行くといいだろう。