昭和時代のユニークな居室が遺る:ホテル雪舟(山口県田布施町)

昭和時代のユニークな居室が遺る:ホテル雪舟(山口県田布施町)
Photo of Hotel Sesshu ruins
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和と洋が交錯する伝説の廃ラブホ「ホテル雪舟」とは

山口県田布施町の県道22号線沿いにひっそりと佇む「ホテル雪舟」は、昭和期から営業していたとされるラブホテルで、その存在は地元では長らく知られたものでした。1970年代以前に開業し、当初は白壁と黒瓦を備えた純和風の外観が特徴でしたが、時代の流れと共にピンクを基調とした洋風建築へと大胆に改装。まさに和洋折衷の極みともいえる風貌が注目を集めていました。営業終了は2010年から2014年頃と見られ、それ以降は放置され、徐々に自然へと還りつつあります。現在はその独特な姿と、噂される心霊現象から「見る人を惹きつける廃墟」として注目されています。


一歩足を踏み入れれば異世界 ――雪舟の異様な建築美

ホテル雪舟の最大の特徴は、廃ラブホテルとは思えないほど凝った内装と構造にあります。本館と別館に分かれ、全体としては10室以上の客室が存在していたと推定されますが、それぞれの部屋がまるで「テーマパークの一角」のような強い個性を放っているのです。

中でも特に有名なのが、ベルサイユ宮殿を模したような豪華絢爛な部屋、北京の紫禁城風の装飾が施された中華風ルーム、そして光る床やミラーボールのようなギミックが設置された近未来風ルームなど、いわゆる「コンセプトルーム」の先駆けとも言える作り込みがなされています。これらの部屋はすべて老朽化が進みながらも、当時の色彩や装飾の一部を残しており、その退廃的な美しさは訪れる者に強烈な印象を残します。

別館はやや離れた林の中に位置し、まるで森の奥の隠れ家のような佇まい。室内には、古びたシャンデリアや謎の装飾品、さらにはガラス瓶や人形、手書きのメモといった生活感のある遺留品も散在しており、廃墟マニアの間では「時が止まった空間」として人気の撮影地となっています。

このように、ホテル雪舟は単なる廃墟ではなく、「昭和の性愛文化と建築様式のアーカイブ」としても極めて貴重な存在です。時間の経過がもたらした朽ちた美しさと、今では再現不可能な遊び心の詰まった空間。それがこの場所の最大の魅力だといえるでしょう。

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